前回は、リスクを「危険」ではなく
「値動きと不確実性」として理解することを整理しました。
今回はその理解を土台にして、
投資信託を選ぶときに実際に手に取る資料——
交付目論見書と月次レポートの読み方を見ていきます。
投資信託を選ぶときって、
ランキングサイトで
上位の商品を選べば
いいんですよね?
人気ランキングとか、
利回りランキングの
上から選ぶのが
早そうな気がします。
それで選ぶと、
一時的に成績がよかっただけの商品を
つかんでしまうことがあります。
見るべきは、ランキングではなく資料そのものです。
資料って、
目論見書のことですか?
分厚そうで読んだことないです・・・
分厚いパンフレットみたいな
イメージです。
最初から全部読むのは
大変そうですよね。
正式名称は「交付目論見書」です。
分厚く見えますが、
初心者が最初に見るべき項目は、
まず4つに絞れます。
交付目論見書とは何か

交付目論見書は、
投資信託を購入する人に対して、
法律(金融商品取引法)で交付が義務づけられている説明書です。
運用会社が作成し、
購入前に必ず渡されます。
内容は、
その投資信託が何に投資する商品か、
どんな方針で運用するか、
どんなコストがかかるか、
どんなリスクがあるか、
という4つの柱で構成されています。
パンフレットって言っても、
ちゃんと法律で
決められた資料なんですね。
そうです。
証券会社の販売サイトや
運用会社の公式サイトから
誰でも無料で見られます。
月次レポートとは何か

目論見書が「購入前に読む説明書」だとすれば、
月次レポート(運用報告書)は
「購入後に読む経過報告」です。
多くの投資信託では、
月に1回のペースで発行され、
直近1か月の値動きや、
そのときどきの組入銘柄の状況がまとめられています。
目論見書と月次レポート、
結局どっちを見れば
いいんですか?
目論見書は買う前、
月次レポートは買ったあとに
使い分けるイメージですか?
正確には、
両方を購入前に見比べます。
目論見書で方針を確認し、
月次レポートでその方針どおりに
実際運用されているかを確認します。
見るべき項目①:何に投資しているか
まず確認したいのが、
投資対象です。
国内株式、外国株式、債券など、
何に投資する商品かを表します。
次にベンチマーク。
これは運用の目標とする市場指数のことで、
例えば日本株なら日経平均株価やTOPIX、
米国株ならS&P500が使われます。
ベンチマークって、
ただの参考値
ですよね?
第2回のインデックス型とアクティブ型の話、
ここでつながってくる気がします。
その通りです。
インデックス型はベンチマークに
近づけることが目的、
アクティブ型はベンチマークを
上回ることが目的になります。
運用成績は、必ずこのベンチマークと比べて評価します。
さらに目論見書や月次レポートには、
組入上位銘柄(上位10銘柄程度)、
国別比率、
業種比率が載っています。
投資信託によっては、
上位10銘柄だけで資産全体の30〜50%程度を占めることもあり、
「分散されているはずなのに、
実は数銘柄に集中している」
というケースもあります。
福袋のはずなのに、
中身が数種類に
偏ってることもあるんですね!
そうです。
商品名だけでは分からないので、
国別比率・業種比率まで
必ず見ておきたいところです。
見るべき項目②:コストを示す3つの数字

続いて確認したいのが、
コストに関わる3つの数字です。
信託報酬は、
投資信託を保有している間ずっとかかる年間コストで、
インデックス型ならおおよそ0.1〜0.3%程度、
アクティブ型ならおおよそ1〜2%程度が目安です。
購入時手数料は、
買うときに一度だけかかるコストで、
0%(ノーロード)の商品もあれば、
3%程度かかる商品もあります。
信託財産留保額は、
解約するときに差し引かれるコストで、
0〜0.3%程度が目安です。
信託報酬って、
1%くらいなら
大した差じゃないですよね?
1回払うわけじゃなくて、
毎年かかるんですよね。
でも1%くらいなら
誤差な気もします。
実は誤差ではありません。
例えば100万円を20年運用した場合、
信託報酬が1%違うだけで、
最終的な資産額に数十万円単位の差が出ます。
信託報酬は、保有している間ずっと毎年かかるコストです。
見るべき項目③:規模とリスクを示す数字

最後に、
純資産総額です。
これはその投資信託にどれだけのお金が集まっているかを示す数字で、
30億円を下回る規模が続くと、
繰上償還(運用が途中で終了すること)の
リスクが高まるとされています。
為替ヘッジの有無も確認しましょう。
「あり」なら円高・円安の影響を抑えられますが、
その分コストがかかります。
「なし」なら為替の影響をそのまま受けます。
繰上償還って、
運用が終わって
お金が返ってくるだけ
ですよね?
お金自体は戻りますが、
自分の意思とは関係なく
運用が打ち切られる点が問題です。
長期で持ち続けたい人にとっては、
計画が崩れる原因になります。
あわせて分配方針も確認しましょう。
定期的に分配金を出す「分配型」と、
分配金を出さずに運用に回す「無分配型(再投資型)」があります。
そして過去リターン(1年・3年・5年・10年の年率実績)と、
最大下落(過去にどれくらい値下がりした局面があったか)を見ておくと、
前回整理した「リスクとの付き合い方」を
具体的な数字で確認できます。
最大下落を見ておけば、
前回の「自分は30%下落に
耐えられるか」が
具体的な数字で分かるんですね。
その通りです。
過去の最大下落率は、
未来の保証ではありませんが、
「どこまで下がりうるか」の目安として、
資料の中でもっとも実用的な数字の一つです。
予算・年齢で「最初に見る項目」は変わる
項目がこんなに多いと、
結局どれを優先して
見ればいいのか
わかりません・・・
とりあえず信託報酬だけ
見ておけば
いい気がします。
信託報酬は確かに重要ですが、
実は予算や年齢によって、最初に見る項目は変わります。
状況別に整理すると、こうなります。
- 少額からコツコツ積み立てたい人:信託報酬・購入時手数料を最優先。保有期間が長くなるほどコストの差が効いてくるため
- 年齢が若く、長く運用できる人:信託報酬の低さと最大下落の大きさを確認。時間を味方にできるので、多少の下落耐性は取りやすい
- 退職が近い・年齢が高い人:最大下落・分配方針を最優先。大きく下がりにくく、安定した分配があるかを確認する
- まとまった金額を一括で投資したい人:純資産総額・ベンチマークとの差を確認。繰上償還リスクと、運用がきちんとできているかを見る
- 海外資産への投資で為替が気になる人:為替ヘッジの有無を確認。ヘッジあり・なしで為替リスクの受け方が変わる
つまり、
自分の予算や年齢に合わせて、
優先する項目を決めればいい
ということですね。
「過去1年の利回り上位=おすすめ」ではない理由
ここまで見てきた項目を踏まえると、
「過去1年の利回りランキング1位」を
そのまま選ぶのが危険な理由が見えてきます。
理由は大きく4つあります。
一時的な好成績、
テーマ相場、
集中投資、
相場環境の影響です。
1年で+50%とか出ていたら、
むしろ買うべき商品
じゃないんですか?
勢いのある商品だから、
このまま伸びそうな
気はします。
そこに罠があります。
例えばAI関連株のように
特定テーマに資産の60%以上を集中させた商品は、
そのテーマが盛り上がった1年だけ
大きく成績を伸ばすことがあります。
これが「テーマ相場」と「集中投資」です。
さらに、
その年の市場全体が好調だった
「相場環境の影響」も無視できません。
市場全体が上昇している年は、
多くの投資信託が一時的に好成績になります。
翌年テーマや相場環境が変われば、
同じ商品が一転してランキング下位に沈むことも珍しくありません。
つまり、
ランキング1位は
「去年たまたま当たった」
だけかもしれないんですね。
正確には、
「当たった理由」が
来年も続くとは限らない
ということです。
だからこそ、ランキングの順位ではなく、
今回見た目論見書・月次レポートの項目で比較するのが安全です。
つまり、
ランキングで選ぶのではなく、
目論見書と月次レポートを読んで
自分で比較する、
ということですね。
では、結局どの数字を満たしていれば選んでいいのか
結局、
組み合わせを考えるときの
ヒントって
何かあるんですか?
オルカン1本で
もう十分な
気がします。
1本でも、組み合わせても、どちらも正解です。
考え方の一つがコア・サテライト戦略です。
安定させたい部分を「コア」、
積極的に伸びを狙う部分を「サテライト」
として分けて考えます。
オルカン100%というシンプルな考え方
もっともシンプルなのは、
オルカン1本だけを持つ考え方です。
世界中に分散されているため、
これ単独でも「コア」の役割を果たせます。
組み合わせを考えるのが面倒、
もしくは値動きの大きさを抑えたい人には、
無理に他の商品を足す必要はありません。
オルカン+NASDAQ100、オルカン+FANG+の考え方
オルカンを「コア」、
NASDAQ100やFANG+を「サテライト」として、一部だけ追加する考え方もあります。
米国のハイテク企業の伸びにも期待しつつ、
土台はオルカンの世界分散で支える形です。
サテライト部分を増やすほど、
値動きの大きさも一緒に増えていきます。
コアで土台を作って、
サテライトで
少し攻める、
ということですね。
その通りです。
「1位を避ける」のではなく、
「この5つの目安を満たしているか」で
候補を絞り込み、
最後に予算・年齢で1本を選ぶ。
これが資料を読んで比較する選び方です。
NASDAQ100とFANG+を併用する場合の注意
NASDAQ100とFANG+を両方持つ場合は、
注意が必要です。
FANG+の対象企業は、
NASDAQ100の上位企業とかなり重複しています。
2つを組み合わせても、
分散にはほとんどならず、
むしろ集中度をさらに高めることになります。
まとめ:資料を読む力が、商品比較の基礎になる
分散させてるつもりが、
実は同じ会社を
2回買ってる
ことになるんですね。
分散させてるつもりが、
実は同じ会社を
2回買ってる
ことになるんですね。
iDeCoはコア中心、攻め枠はNISA側
コア・サテライトの考え方は、
制度との組み合わせにも応用できます。
第3回・第4回で見たとおり、
iDeCoは原則60歳まで引き出せない制度です。
引き出せない期間が長いからこそ、
iDeCoでは値動きの大きい商品ではなく、
コア向きの商品を中心に置くのが基本的な考え方です。
一方NISAは、
必要なときに売却できる自由度があるため、
サテライトの攻め枠としても使いやすい制度です。
iDeCoもNISAも、
同じ感覚で商品を
選べばいいと
思ってました。
制度の自由度が違う以上、
同じ感覚で選ぶと無理が出ます。
動かしにくい資金はコアで安定させ、
動かしやすい資金でサテライトを攻める。
これが基本的な役割分担です。
第6回まとめ
- 交付目論見書は購入前の説明書、月次レポートは購入後の経過報告。両方を購入前に見比べる
- 投資対象・ベンチマーク・組入上位銘柄・国別比率・業種比率で「何に投資しているか」を確認する
- 信託報酬・購入時手数料・信託財産留保額は、保有期間中ずっと効いてくるコスト。1%の差でも長期では数十万円単位の差になる
- 純資産総額・為替ヘッジ・分配方針・過去リターン・最大下落で、規模とリスクの大きさを確認する
- 過去1年の利回り上位は、一時的な好成績・テーマ相場・集中投資・相場環境の影響でできた順位かもしれない。「1位を避ける」のではなく、信託報酬0.2%程度以下・純資産総額50億円以上・ベンチマークとの差1%以内・複数年の実績・自分が耐えられる最大下落かを基準に候補を絞り、予算や年齢で最後の1本を選ぶ
今回は、
投資信託の資料の読み方を整理しました。
次回は、
第2回からずっと予告し続けてきたNISAの
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を、
いよいよ詳しく見ていきます。
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